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Author: みっち 
とっても小さく生まれ、重症心身障害を持つ次女・ふたばと過ごす日々を綴ります。

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『風の旅』

ずいぶん前の話ですが。

ふたばがまだNICUに入院していた頃、
病院で「新春コンサート」なるものが開かれました。

生後7ヶ月、ちっちゃくて、まだまだ機械だらけの姿だった頃です。
手の拘縮もすごい頃です(^^;
7ヶ月の頃

ふたばはNICUから出ることができなかったので、
面会のあと、
病院のロビーに、夫とひとみと3人で、コンサートを聴きに行きました。


入院患者さん(主に高齢の方)を対象としたコンサート。
音楽で患者さんの心を元気に…というコンセプトのイベントでした。

出演は、声楽家の時田 直也(ときた なおや)さん
未熟児網膜症で、生まれたときから視力がなかった(全盲)という時田さん。
力強い歌声、ユーモアのあるトークからは想像できないほどの
生まれた時からの困難を、音楽にまじえてお話しされました。
その中で、星野 富弘(ほしの とみひろ)さんという方のお話がありました。

星野さんは、群馬県出身の画家・詩人です
体育教師として着任した2ヶ月後、
宙返りの模範演技で失敗により頸髄損傷の重傷を負い、
肩から下の機能が麻痺してしまいました。
9年間におよぶ入院生活の間に、
口にくわえた筆で水彩画、ペン画を描き始め、後に詩を添えるようになり
退院後も創作活動を続けました。

その星野さんが描いた『渡良瀬川(わたらせがわ)』という文章を、
コンサートで時田さんは音楽に乗せて語ってくれました。

(原文は長いので、要約しています)

星野さんが小学校の頃、
家の近くを流れる「渡良瀬川」に泳ぎに行きました。
その日は増水していて流れも速かったので
岸のそばの浅い所でピチャピチャしたり、
流れの速い川の中心に向かって少し泳いでは引き返したりして、遊んでいました。

そのうち、どうしたことか、速い流れに流されてしまったのです。
当時小学生の星野さんは必死に手足をバタつかせ、
元の所へ戻ろうともがき、暴れました。

そうしているうち、星野さんの頭の中に、
いつも眺めていた渡良瀬川の流れる姿が浮かんできます。
今おぼれかけている所は星野さんの背よりも深い、
けれどこのまま流されていけば、必ず浅い所に行くはずだ、と気づきます。

「…そうだ、何もあそこに戻らなくてもいいんじゃないか」
星野さんは、からだの向きを変えて、下流に向かって泳ぎ始めました。
じきに、元いた岸とはべつの、浅い所へたどり着いたのでした。

星野さんは、のちに怪我をして全く動けなくなってしまいます。
過ぎた日のことを思い悩んでいた時に、
ふと、激流に流されてもがいていた自分の姿を見たような気がしたそうです。

「何もあそこに戻らなくてもいいんじゃないか。
今できるいちばんよいことをすればいいんだ」




時田さんがコンサートで、
星野さんの言葉を借りて、入院している患者さんに向けたメッセージ。

もがき苦しんでも、元に戻れないこともある。
でも、元いたのとはべつのところにも、きっと光がある。



コンサートでは、涙を流して聴いておられる患者さんもいました。
私には、この「渡良瀬川」の文章がずっしりと心に響いたのでした。


2年以上前に聴いた新春コンサートのことを最近思い出し、
星野さんの本を借りてきました。

『風の旅』
星野 富弘 著
立風書房
四季抄 風の旅


詩画集ですが、
今回紹介した『渡良瀬川』という文章は、
この本の「病床メモ」という章に収録されています



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コメント

Secret

ふと、立ち止まった時、私はどこに向かおうとしているのか、わからなくなることがあります。
でも、時に流れに身をまかす、ということも大切だな、と、みっちさんの記事を受けて思いました。どうもがいても、どうしようもないことってあるなって。
『渡良瀬川』なんだか響く話ですね…

申し訳ありません。
『写真』の記事の名無しコメントは私です ´д` ;
名前ないと不気味でしたよね(T_T)

『風の旅』

頑張ったね

こんにちは。
みっちさんの感度のよさ、いつもながらに感服しました。

星野富弘さん、私もお名前を見て思いだしましたが、他の作品を目にしたことがありました。絵が優しいながらに強さがあり、その絵の印象が鮮明に目に焼き付いていました。

激流のお話、心に響きました。
次女が変わってしまってから5ヶ月。常にあそこに戻りたい、と過去にとらわれていました。
激流にもまれ、もがき苦しみながら刹那に思いついた答え。
結果 正しい答えだったのですね。
読んでいて、その経験がのちの星野さんの人生に影響を残したのか、とハッとさせられました。

そうですよね、もがき苦しんでもうどうしようもないと思ってしまった時に、今できることに目を向けることでそこから抜け出せるんですね。
それはやはり、過程が大事なのでしょうね。もがき苦しんできたからではないとたどり着けない境地かと思います。

星野さんの作品は母が持っていたもので、私が多感な頃に目にしたのを、ふと思いだしました。
その頃はまだ詩の深い意味はわかりませんでしたが、絵のコントラストが本当に素晴らしかったのを覚えています。
今の私が星野さんの詩に触れたら、とても勇気付けられそうです。

私自身、過去にとらわれてしまうことから脱却できる糸口につながりそうです。出口の見えないトンネルの例えで言えば、出口と思って進んでいたら、実は反対側だった、なんてことですよね?

ちょうど今が明け方なのですが、外の景色が薄暗さに白々としてきて、闇から私も抜け出せたように感じました。

みっちさん、素晴らしい作品をご紹介くださって、本当にありがとうございました。

渡良瀬川のお話を読んで、機転をきかせる、発想の転換、その状況でとっさの判断ができる星野さんは、すごい人だなと思いました。

幸せ という花があるとすれば
その花の蕾のようなものだろうか
辛い という字があるもう少しで 幸せになれそうな字である

星野さんの詩をある方に教えてもらいました。こんな感性の持ち主になりたいですが、まだまだ未熟です。

みっちさん、いつもありがとう。
たくさんのことを、気づかせてもらってます。

わー&かーママさんへ

わー&かーママさん、こんにちは☆コメントありがとうございます。

良かった。
前回のコメント返信で、なんとなく、わー&かーママさんかな、と思い
そのつもりで返信をしたので、良かったです(^^)

そこに向かえばいいのか途方に暮れることもありますよね。
そんな時はもがくのを止めて、流れに身をまかせてもいいんじゃないかと思うと
なんだか少し気が楽になる気がします。

元の場所、前までの自分、それまでの暮らしに
しがみつくのをやめて、新しい世界に目を向けるっていうのも
なかなか素敵なことですよね。

愛姫☆さんへ

愛姫☆さん、こんにちは☆コメントありがとうございます。

病気や事故で人生が変わっても、
そこから新しい生活を楽しめる人は本当にすごいですね。

勇気りんりんさんへ

勇気りんりんさん、こんにちは☆コメントありがとうございます。

お母様が作品をお持ちだったんですね。
星野さんの絵も詩も、勇気りんりんさんが書かれていたように
優しさの中に強さがありますよね。
ご本人が長らくもがき苦しみ、そこから抜け出したからこそ
できる表現なのかもしれないですね。

勇気りんりんさんのおっしゃる通り
もがき苦しんできたからではないとたどり着けない境地、というのは
確かにあると思います。

過去にとらわれるのはきっと自然なことなんでしょうね。
私も、ハンデのある子どもの子育てがすごく不安だった時期があるんですけど
何が不安だったかって、それまでの生活が一転してしまうことが一番不安でした。
変わるのが怖かったのかな、と思います。

> 出口の見えないトンネルの例えで言えば、
出口と思って進んでいたら、実は反対側だった、なんてことですよね?
→→そういうこともあるんでしょうね。
あとは出口が1つではなくて、小さい出口がいくつかあることもあるのかも。

ふたばを出産したとき、
友達が「明けない夜はない」「解決できない悩みはない」
よく言ってくれましたが、そんなことはないと思っていました。
だって、目の前のわが子の障害は治らないのに、って。
障害や病気がある限り、ずっと向き合っていかなければいけないし、
夜が明けることなんてないと、思っていました。

でも違うんですね。
夜が明ける=障害や病気が治る、ということなんかではなく
その子らしい成長を見守り、その子と生きていくことの楽しみを
見出していけばいいんだといつからか思えるようになっていました。

気が付いたら少しずつ闇から抜け出していた、なんてことがあるのかもしれないです。

勇気りんりんさん、お互い、頑張りましょうね。
いつも心のこもったコメントをありがとうございます(^^)
勇気りんりんさんのコメントに対して、
いつもしゃべり過ぎてしまいます(笑)。

あかみらさんへ

あかみらさん、こんにちは☆コメントありがとうございます。

星野さんは本当にすごい人です。
詩画集の中の「病床メモ」を読んでいると、
ブラックな気持ちも書かれているんですが
そんな気持ちとの葛藤があったからこそ
言葉や絵が、人の心を動かす力を持っているんだと思います。

辛い という字がある。もう少しで 幸せになれそうな字である
→→これも素晴らしいですよね。大好きです。
幸せと辛いは似ている、と言うのではなく
「もう少しで幸せになれそう」という表現がとても素敵です。

紹介してくださってありがとうございます(^^)